観終わった瞬間、
いったいどういうことだってばよ
って即もう1回観直したくなる映画が好きな鯖です。よろしくお願いします。
今回は映画史の中でも超難解と言われる『ドニー・ダーコ』について、簡単な解説&考察を書いていきます。
『ドニー・ダーコ』を観てもワケワカメだったという人は参考にしてもらえると嬉しいです。
『ドニー・ダーコ』の概要
映画ランク:A
■あらすじ
マサチューセッツ州に住む高校生のドニー・ダーコ(ジェイク・ギレンホール)。
ドニーは精神が不安定であり、夢遊病に悩まされている。
夢遊病と思われる症状の中、奇妙な声に導かれてゴルフ場へと向かうと、そこにはフランクという名の銀色のウサギがおり、「世界の終わりまであと28日と6時間と42分12秒しかない」とドニーに告げる。
翌朝ゴルフ場で目覚めたドニーが家に帰ると、旅客機のエンジンが彼の部屋を直撃しており、夢遊病のおかげで一命を取りとめたことを知る。
■劇中書籍『タイムトラベルの哲学』について
『ドニー・ダーコ』を解説&考察するにあたって、劇中に登場するロバータ・スパロウ著『タイムトラベルの哲学』の内容が必須となります。
この『タイムトラベルの哲学』の内容は公式サイトにて公開されている(いた?)のですが、劇中に全く出てこない単語や概念がいっぱいでてきてですね、
いやそりゃわかるわけないわ…
ってな感じで、劇中でそれに全く触れないって映画としてどうなの…?って感じではある。
考察でなんとか真相までたどり着けるくらいまでヒントを散りばめた作品だったら、メメントレベルの超傑作になっていたかも。
以下の解説や考察は、この『タイムトラベルの哲学』を翻訳した内容を基にしています。
原文に興味がある人はこちらのPDF(他サイト注意)をご参照ください。
※ここからはネタバレを含みます。
っていうか本編を鑑賞後じゃないと全く意味わかんない怪文書なので、必ず『ドニー・ダーコ』鑑賞後に読んでください。
『ドニー・ダーコ』&『タイムトラベルの哲学』の解説と考察
■プライマリー・ユニバース
『タイムトラベルの哲学』では本来ドニーたちが生きる主たる宇宙(世界線)のことをプライマリー・ユニバースとしています。
プライマリー・ユニバースは戦争、疫病、飢饉、自然災害などの大きな危険に満ち、死は平等に訪れる宇宙。
プライマリー・ユニバースにおける4次元は非常に安定しており、時間が加速したり遡ったりするような、何かしらの捻れが生じることは極々稀であるとのこと。
■タンジェント・ユニバース
プライマリー・ユニバースと隣接する異なる宇宙(世界線)がタンジェント・ユニバースです。
このタンジェント・ユニバースが作中における旅客機のエンジンが落ちた後のメインの舞台。
タンジェント・ユニバースが発生した場合、プライマリー・ユニバースとの安定性とは真逆で非常に不安定であり、数週間ほどしか維持できません。
「世界の終わりまであと28日と6時間と42分12秒しかない」というのは、このタンジェント・ユニバースが維持できる期間のこと。
最終的には、タンジェント・ユニバース内のすべての存在を破壊するブラックホールをプライマリー・ユニバース内に形成し崩壊してしまいます。
■アーティファクト
タンジェント・ユニバースが発生した際の最初の兆候として、アーティファクトが生成されます。
アーティファクトは金属で作られた物質に限られます。
作中においては、ドニーの部屋に墜落する旅客機のエンジンがアーティファクト。
■リビング・レシーバー
タンジェント・ユニバースが発生した際に、アーティファクトをプライマリー・ユニバースへ戻す(世界線を戻す)役割を持ったリビング・レシーバーが選ばれます。
本作においてはドニーがリビング・レシーバー。
リビング・レシーバーがどうやって選ばれるか、なぜ選ばれるかは誰にもわかりません。
リビング・レシーバーは筋力の向上、テレキネシス、マインドコントロール、水と火を呼び起こす4次元の能力をもっています。
ドニーが雲を動かしたりエンジンを狙った箇所に移動させたりしている力がテレキネシス、学校を浸水させたり火をつける描写なしにジムの家に放火したりするのが水と火を呼び起こす能力です。
もしかしたら不自然にグレッチェンがドニーに好意を抱くのは、無意識にマインドコントロールを使った結果かもしれない。
リビング・レシーバーは悪夢を見たり、幻覚や幻聴に悩まされることになります。
これらの現象はマニュピレイテッドとされ、リビング・レシーバーに恐怖を与え、破滅の道を歩ませようとします。
■マニピュレイテッド・デッド
タンジェント・ユニバース内で死亡してしまった人物がマニピュレイテッド・デッドとなります。
作中においてはフランク・アンダーソンとグレッチェン・ロスが該当します。
マニピュレイテッド・デッドはリビング・レシーバーよりも強力な存在であり、リビング・レシーバーが4次元能力を駆使してアーティファクトをプライマリー・ユニバースへと戻さざるを得ないような罠を仕掛けます。
また、マニピュレイテッド・デッドは4次元的概念を介してリビング・レシーバーへとコンタクトを取ることができます。
ドニーが銀色のウサギの幻覚を見てしまうのは、ハロウィンの仮装で銀色のウサギの衣装を着たまま死んでしまったフランクがマニピュレイテッド・デッドとなったため。
※グレッチェンに関する考察①
グレッチェンはマニュピレイテッド・デッドとして行動してねーじゃん!
って意見もあるかもですが、フランクのような幻覚・幻聴によるコンタクトじゃなく、ドニーにとってかけがえのない存在となってから死亡することこそが、マニュピレイテッド・デッドとしての役目かと思われます。
つまり、グレッチェンが死亡しない世界線(プライマリー・ユニバース)に戻るための行動をドニーが取らざるを得ない状況に追い込んでいるということ。
■マニピュレイテッド・リビング
リビング・レシーバーの親しい友人や隣人であり、かつマニュピレイテッド・デッドに該当しない人物がマニピュレイテッド・リビングとして存在する可能性が高くなります。
作中においてはドニーの家族や、学校の教師、登場人物のほとんどがこのマニピュレイテッド・リビングに該当。
マニピュレイテッド・リビングはしばしば分別を無くした暴力的な行動を取る場合がありますが、これらはアーティファクトをプライマリー・ユニバースへと戻すリビング・レシーバーをサポートするために生じた不幸な結果とのこと。
作中の例としてはクラスメイトが突如ドニーやグレッチェンを襲撃することなどが該当するかと思われます。
※ロバータ・スパロウに関する考察
『ドニー・ダーコ』の作中ではマニュピレイテッド・リビングに該当するロバータばばあですが、恐らく彼女は以前もタンジェント・ユニバースに巻き込まれたことがあり、『タイムトラベルの哲学』を執筆するに至ったと考えられます。
マニュピレイテッド系では真相までたどり着けそうにないため、リビング・レシーバーとしてタンジェント・ユニバースに存在し、彼女は死ぬことなく世界線を戻すことができたのではないか…ってのが僕の予想。
ロバータばばあがいつも郵便受けを見ていた理由は、タンジェント・ユニバースに巻き込まれた人からの助けを逃さないようにしていた習慣が正気を失ってからも残っているためかと思います。
それを裏付ける『タイムトラベルの哲学』の一説がこちら。
この本で予言された出来事が起きた時にもし私がまだ生きていたら、手遅れになる前にあなたが私を見つけてくれることを願っています。
THE PHILOSOPHY OF TIME TRAVEL By Roberta Sparrow
■エンディングの考察
ドニーは『タイムトラベルの哲学』を読んだことで自身がリビング・レシーバーであることを知り、グレッチェンの死を目の当たりにしたり、家族が旅客機事故に巻き込まれるであろうことを悟ります。
その結果、アーティファクトをプライマリー・ユニバースへと戻す(世界線を元に戻す)ことを決意。
恋人や家族の不幸を回避したことへの安堵の顔を浮かべたまま、墜落したエンジンに押し潰されて死亡というラストシーン。
ジムを始めとした不幸に見舞われた人物が号泣していたり、眼球を撃ち抜かれたフランクが目を押さえて困惑していたり、息子の命と引き換えに生存していることを悟っている母親が放心状態であったりと、マニピュレイテッド・デッドやマニピュレイテッド・リビングはタンジェント・ユニバースでの記憶を少なからず引き継いでいる模様。
※グレッチェンに関する考察②
公式から「マニピュレイテッド・デッドである」と名言されているのにもかかわらず、唯一グレッチェンのみ記憶がすっからかんでドニーのことさえ覚えていない理由が不明確。
- 説①:タンジェント・ユニバースが存在していなければドニーと無関係の存在だから
- 説②:グレッチェンに辛い思いをさせないようドニーがマインドコントロールで記憶を消去した
のどっちかかなと僕は思っているのですが、
もし過去に戻れて、つらい時間と楽しい時間を交換できたら?
ってモノローグが流れていることからも、これは説②のマインドコントロールによる作用かなと思っています。
『ドニー・ダーコ』のネタバレと考察まとめ
僕は未鑑賞ですが、ディレクターズカット版に収録されているナレーションで宇宙人の存在が明示されているようです。
ドニーの能力やフランクの意識介入などの4次元的パワー、つまり説明するのがめんどくさい部分は全部宇宙人のせいだよってことらしい。
ほんとアメリカ人ってサメと宇宙人好きだな…
かゆい
うま