『明日、ママがいない』ってドラマありましたよね。
炎上しまくって放送中止の上、DVDやBlu-rayの販売もお蔵入りしたヤツね。
あのドラマのタイトル、ぶっちゃけこの映画のパクリだと思う。
こんにちは、おはようございますの鯖です。よろしくお願いします。
今回は僕的に大好きな作品で、これ系のジャンルのオススメ聞かれたら割と高頻度で紹介している映画について。
大ヒットではないけど大絶賛された作品なので、知っている人も多いと思います。
明日、君がいない
映画ランク:S+
予告編はこちら。
監督 | ムラーリ・K・タルリ |
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脚本 | ムラーリ・K・タルリ |
製作 | ニック・マシューズ ケント・スミス ムラーリ・K・タルリ |
出演 | テリーサ・パーマー |
■あらすじ
舞台はオーストラリア南部のとある高校。
午後2時37分、”誰か”が自ら命を絶ってしまう。
時系列はその日の朝まで遡り、それぞれの悩みを抱える6人の高校生が午後2時37分に至るまでの過程を描く。
いったい誰がどんな理由で、自殺という結末を選んでしまったのか?
ってな話。
■登場人物
本作の舞台はオーストラリアですが、アメリカのハイスクールにおいてスクールカーストっていうのあるじゃないですか。
Jock:スクールカーストの頂点。アメフトなどのスポーツ選手。
Queen Bee:チアリーダーの最上位。大抵Jocksのスター選手と交際、もしくはつるんでいる。
という上位陣からはじまり、比較対象として、
Nerd:内向的な人達、スポーツ以外の趣味に夢中な人達
がいます。
NerdにはGeek(オタク)、Goth(ゴス)、Brain(ガリ勉)が含まれていて、カースト最底辺は
Target:いじめの対象者
となるようです。
TargetはもちろんNerdに該当する場合もあればそうでない場合もありますが、まぁこれは日本社会でもなんとなく想像できますよね。
本作にはこのスクールカースト上位陣から下位陣までいろんな高校生が登場し、このヒエラルキーを頭の隅に置いておくと、この作品の言わんとしていることがより明確に感じられます。
本作に出てくる人たちは、Jock&Queen BeeからNerdまで漏れなくみんな悩み散らかしてて、本当に危なっかしく「コイツ危なくね?」「いやコイツの方がやべーじゃん」って終始ヒヤヒヤさせられっぱなし。
ゲイの少年が出てきて「あーもーコイツで決まりですわ」って思っていたら、何の悩みもなさそうなJockまでもが奥に秘めた苦悩を急にぶっこんできて「お前もかよ!」ってなったり。
中盤を迎える頃には誰が自殺を図ってもおかしくない、みんなギリギリの状態でふんばっているということがわかってきます。
そして、本作が派手な演出を用いることなく緊張感を保てているのには、上記のような緊張感に加え、以下の撮影・編集技術が大きな要因。
■心理描写のシームレスさ
6人ものキャラクターの複雑な心境をわずか99分でガッツリ描けているのは、それぞれの登場人物の心理描写をめまぐるしくもスムーズに繋げているため。(たぶん)
登場人物どうしががすれ違ったりするような、ふとした瞬間にそのときだけの“主役”が入れ替わる技法がすごく秀逸。
そしてそれを補うように、ことあるごとに登場人物達のインタビューが挟まれるんですが、ただの補助的役割だと思っていたこのインタビューが、自殺によって「明日、誰かがいない」というのはどういうことなのかを視聴者に伝えてくれる役割を果たしています。
この金を積みさえすればできるわけではない手腕には、視聴当時本当に驚かされたし、感銘を受けました。
■ヤバすぎる監督
このオーストラリア産の大傑作を生んだムラーリ・K・タルリ監督、本作の脚本を書き上げたのはなんと19歳のとき。
本作は、彼の親友が何の予兆もなく突然自殺してしまった経験を基に作られたそう。
彼のそのときの心情を表しているかのように、本作で最終的にフォーカスされるのは自殺した人物ではなく、残された人たちの心情です。
多少は映画向けに色はつけているとは思いますが、変に美化するでもなく過剰にドラマチックにするのでもなく、ぽっかり空いてしまった小さな空白をありのまま可視化したかのような作品。
この監督の作品全部観たいわ!
ってなって検索してみたんだけど、その後目立った活動はあまりないらしく非常に残念。
燃え尽きてしまったのかもしれん。
■キャスト
障害をもった登場人物スティーヴンを演じるのは、監督がスカウトしてきた実際に障害を抱えた人であったり、本作の出演者はぶっちゃけ全然知らない人ばっかり。
唯一、両親の自分に対する扱いに不満を抱く少女メロディを演じるテリーサ・パーマーが有名な俳優ですね。
彼女は呪怨 パンデミックや、ハクソーリッジなど有名作にも顔を出していて、順調に売れている模様。
彼女の出演作品で一番オススメは何回も紹介しているこちら。
『明日、君がいない』のまとめ
今回はネタバレを書いちゃうと監督が伝えたかったであろうメッセージ性が半減しちゃうと思うので、ネタバレなしで紹介してみました。
本国では「自殺を誘因してしまうのでは」という批判も受けたらしいですが、そのような批判している人は恐らくこの作品を観ていないか、読解力が欠如どころか全部トイレに流れちゃったんじゃないの?って感じで、自殺を美化しているような作品ではありません。
一方、視聴者に「自殺を無くすためにこうしていかなきゃ!」みたいな説教をするような作品でもない。
そのため、メッセージ性はあれど具体的なベクトルが明示されているわけではないので、誰がどう捉えようが自由ではあると思います。
これから観る人や鑑賞済の人で『自殺したことによる一瞬の認知』や『自殺する意味や理由』じゃなくて、『自殺の末路にある恐怖や苦しみ』、『死の先にあるのはただ ”無” である』ということについて注視する人がもしいたら、その人とは美味しいプロテインが飲めそう。
この作品の邦題が、『君 ”は” いない』じゃなくて、『君 ”が” いない』となっているのは、つまりそういうことだと思うんですよね。
珍しく邦題がいい仕事してる。
かゆい
うま