警察に相談したのに何もしてくれなかったとか、日本でもいろいろ警察って無能なのでは?と疑われるエピソード多いですよね。
特にあの県警。
こんにちは、おはようございますの鯖です。よろしくお願いします。
イ・ビョンホン主演の「悪魔を見た」って韓国映画を観たときも思ったんですが、作中の警察機関がめっちゃ無能なんですよね。
無能にしとかないとあっさり事件解決されちゃって都合が悪いってことかもしれないんですけど、韓国でも警察は無能みたいなイメージ強かったりするのかなって。
そんな警察無能すぎじゃね?って感じた、映画がこちら。
サバハ
映画ランク:A
予告編はこちら
原題:"사바하"/"SVAHA : THE SIXTH FINGER" 監督:チャン・ジェヒョン 出演:イ・ジョンジェ/パク・ジョンミン 田中泯
ジャンルはだいたいこんな感じ。
アクション ☆☆☆☆☆ ドラマチック ★★☆☆☆ コメディ ★☆☆☆☆ ホラー ★★☆☆☆ グロテスク ★☆☆☆☆ ミステリー ★★★★☆ 鯖派 ☆☆☆☆☆
■あらすじ
怪しい新興宗教の取材をし、暴露記事を書くのが生業のパク牧師(イ・ジョンジェ)。
彼が次に追い始めたのは、とある宗教団体の「鹿野苑」。
信者から一切金銭を受け取らないとの噂だったり、関連する建物に何か鹿のマークがついていたり、いろいろ怪しい。
友人の僧侶や、助手っぽい人の力も借りつつ「鹿野苑」の調査を進めるにつれ、インチキ宗教だと思って軽い気持ちで手を出したのに、
やっべ!コレ本気でヤバいヤツじゃん!
ってなりつつも恐るべき真相を暴いていくお話。
■作品の評価について
まず最初に言っておくと、全く期待してなかった割にめっちゃ面白かった。
やっぱ韓国映画って凄いわってなる。
なんか、韓国映画って面白ぇ!!って感想より、すっげ!!って感情の方が強くなる作品多いですよね。
胸クソだったり、悲壮感漂う作品多めな気がするんですけど、観終わった瞬間、すっげ!!ってよくなる。
なお、世間一般(海外含め)の評価は、『まぁ、普通。』くらいの模様。
なぜだ。Wikipediaのページすらない。なぜなんだ。
■極上のちょい怖ミステリー
冒頭からちょっと怪しい雰囲気。
韓国映画はこういう導入シーンめっちゃ上手で、ゾクゾクしちゃうよね。
その導入部分は
- 双子の姉妹が産まれ、姉は毛むくじゃらの奇形で産まれてしまう。
- しかも母親のお腹の中で、妹の足を喰っていたというトンデモ姉ちゃん。
- 姉は”悪鬼”とされ、出生届を出さずに存在を隠されることとなる。
というもの。
この“悪鬼”の存在と、謎の宗教団体、そして暗躍する“将軍”と呼ばれる謎の人物たち。
前半はぶっちゃけ登場人物とかストーリーがごちゃついてるように見えるんですが、パク牧師が調査を続ける過程で1つ1つの点が線になっていく様は必見です。
ちなみに脚をかじかじされていた妹の方は、ちょっと足を引きずっているもののK-POP聴きながら出会い系に手を出すくらい元気に成長している模様。
※ここから超絶ネタバレを含むのでご注意ください。
■仏教×キリスト教のマッシュアップ作品
・仏教側面
基本的に登場人物たちの設定は仏教をベースに作られています。
“将軍”と呼ばれる4人の正体は、仏教における“四天王”になぞらえられた者たちであり、キム・ジェソクという人物からの使命の基、行動しています。
彼らは存在を秘匿するために、警察等の機関に存在を知られてしまった場合には自ら命を絶つよう指令を受けており、残りは“広目天”(パク・ジョンミン)のみ。
そしてチベットのめっちゃ偉い坊さん(田中泯)から
『キム・ジェソクは“弥勒菩薩”なんですわ、指も6本あって、なんかすごいわ』
みたいなことを語られ、ジョジョに『あ、やべーとこに脚突っ込んじゃった』みたいな。
謎の宗教団体のバックには本物の菩薩いらっしゃったみたいな。
地下アイドルに手出したらバックに恐い人達いらっしゃったみたいな。
・キリスト教側面
キム・ジェソクは”四天王”たちに以下のことを説いていまして。
- 邪悪なる”ヘビ”を排除する必要がある
- “ヘビ”はある土地(忘れた)で1999年に生まれた女の子である
- その土地1999年に生まれた他の女の子も「魔軍」である
つまり、1999年にある土地(忘れた)で生まれた女の子を皆殺しにするのが”四天王”の使命であるワケです。
そして、”広目天”は“悪鬼”と呼ばれる双子の姉こそ、”ヘビ”であると確信し、へっぴり腰で最後の戦いに臨んじゃうぜ、みたいな。
※『大量の行方不明者とか殺害された女の子、みんな同じ地方生まれで同い年なのに、パク牧師に何回もしつこいくらいに指摘されてやっと気づくとか警察無能すぎ…。』と、ここで思いました。
『コレなんか聞いたことあるわ』って人いると思うんですが、それもそのはず、新約聖書の「マタイによる福音書」におけるヘロデ大王の幼児虐殺のオマージュなんですよね。
と思ったら、作中でも分かりやすいように、しっかりヘロデ大王が例に引き出されています。
このヘロデ大王の幼児虐殺の内容とは
- ヘロデ大王はめっちゃウェーイ勢で、ヒエラルキーの頂点だった
- あるとき「新しき王=救世主」の誕生を知らされる
- その者はどうやらベツレヘムで誕生したらしい
- そいつ成長したら自身の地位を失っちゃうじゃん
- そうだ!全員メメタァしよ!
- ベツレヘム産まれの2歳以下の男子を全員殺害
ってな感じ。
「新しき王=救世主」っていうのは当然イエス・キリストですね。
マリアネキはこの危機をニュータイプ的にピピピーン!と知り避難していたので、イエスニキは余裕で無事だったワケですけども。
察しがいい人は既に気づいているかもしれませんが、実は本作においても、キム・ジェソクが悪であり、”悪鬼”は善の存在です。
キム・ジェソク⇒”ヘビ”=ヘロデ大王
“悪鬼”⇒”弥勒菩薩”=イエス・キリスト
にそのまま置き換えられるってな感じ。
みんなが”悪鬼”だと思い込んでいた毛むくじゃら姉さんこそ、”弥勒菩薩”(もしくはなんか別のすげー菩薩)だったというワケですね。
キム・ジェソクは元々”ヘビ”だったのか、最初は本当に”弥勒菩薩”だったもののダークサイドに堕ちてしまったのかはちょっと意見が分かれそうですが、失楽園で堕天したルシファーがヘビへと姿を変えるエピソードと、本作の“ヘビ”の立ち位置がマッチすることからも、僕は後者かな、といった感じ。
“ヘビ”の失墜後、”弥勒菩薩”姉さんも事切れてしまう点については、この描写もキリストの贖罪に繋がる?ってところでしょうか。知らんけど。
■信仰に対する問題提起
・パク牧師の宗教観
パク牧師のセリフで
『ときどき疑問に思う。わしらがこんなに苦悩しているのに、神はいったい何をしとるんじゃ、と。』(うろ覚え)
みたいのがありまして。
聖書読んでても、こう感じることめっちゃありますよね。
いや試練だからコレ。
これがお前のためだからコレ。
みたいなこといいつつ、登場人物をえげつないくらい苦しめたり、虐殺も黙認しちゃったり。
・”広目天”の宗教観
今まで手にかけてきた少女達の亡霊に日々苦しめられメンタルボロ雑巾になりながらも、キム・ジェソクこそ悪を滅ぼす善の存在であると信じ、ただひたすら使命をこなしてきた金髪ニーチャン。
信仰してきた絶対的なものが、ただ己の欲望に塗れた存在だったことを知ることとなり、信仰を失った彼が最後に残した言葉はただ『寒い。』
問題提起をしつつも、信仰を失うことに対する空虚感を指摘するような感慨深いセリフで、ワーオ!すっげ!(雑)って衝撃を受けました。
■主役はいない
“広目天”役のパク・ジョンミンさんがインタビューでも語っているように、本作は1人1人の役者さんの演技はめっちゃいいものの、それでいて誰かが突出して目立つワケではないんですよね。
“広目天”に関してもいかにも闇に紛れる刺客のようなイメージではなく、服装も髪型もそこらへんにいそうな若者のようなビジュアル。
パク・ジョンミンさんも地味な服装を用意(自分で用意すんの?)したところ、監督から指導が入り、今のような形になっているとのこと。
一応主役はパク牧師なんでしょうけど、どっちかって言うと、全員で作品自体を持ち上げているように感じました。
それの効果かはわかりませんが、登場人物の描写というよりも作品全体が心に残るイメージで、鑑賞後すごく心地良かったです。
『サバハ』の評価まとめ
最後に、触れなかった劇中の言葉について。
・娑婆訶(そわか)/Svaha:タイトル
出典 精選版 日本国語大辞典
仏語。真言(しんごん)や陀羅尼(だらに)の最後に添えていうことばで、願いの成就を祈る秘語。いやさかの意で用いる。元来は良い供物の意。
なんちゃらかんちゃらそわか!ってヤツ。
・鹿野苑(ろくやおん)
出典 デジタル大辞泉
中インドの波羅奈国にあった林園。釈迦が悟りを開いてのち初めて説法し、五人の比丘(びく)を導いた所。現在のバラナシ北郊のサールナートにあたる。
正直、ヘロデ大王のくだりとか、聖書の予備知識なしの人には不親切な作りになっていますが、それでも観る価値はある作品だと思います。
Netflixに入ってる人で、宗教系の話が好きだとか、ミステリー好きの人はよかったらチェックしてみてください。
かゆい
うま
■VOD/動画配信サービス
「サバハ」が配信中のサービスはこちら(2019年6月現在)
※配信有無の詳細は各サービスをご確認ください。