バットマンはベン・アフレックよりもクリスチャン・ベール派の鯖です。よろしくお願いします。
ベン・アフレックの弟で『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー主演男優賞を獲得するもセクハラで訴えられた過去が掘り起こされたケイシー・アフレックと、『ドラゴン・タトゥーの女』とルーニー・マーラが主演の作品を観ました。
A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー
映画ランク:A
予告編はこんな感じ。
■『ア・ゴースト・ストーリー』のあらすじ
舞台はアメリカ・テキサスの郊外。
小さな一軒家に住む若い夫婦のC(ケイシー・アフレック)とM(ルーニー・マーラ)は幸せな日々を送っていた。
引っ越ししたいMに対し家に留まりたいCだったが、夜中に不審な出来事が起こったことにより引っ越しを決心。
新たな一歩を踏み出そうとしていた最中、Cが交通事故で突然の死を迎える。
Mは病院でCの遺体にシーツを被せ病院を去るが、死んだはずのCは突如シーツを被った状態で起き上がり、そのまま妻が待つ自宅まで戻ってきた。
Mは夫の存在に気づくことはないが、幽霊となったCは、それでも悲しみに苦しむ妻を見守り続ける。
ってな話。
※ここからネタバレを含みます。
■『ア・ゴースト・ストーリー』の顛末
以下が、簡単なことの顛末。
・前半
- ゴーストとなったCは悲しみに暮れるMを見守り続ける
- Mはやがて何かを書いたメモを家の柱に埋め込み、2人が暮らした家を去る
- Cは隠されたメモに執着し、住人が変わってもいつまでも家に留まり続ける
- やがて家は取り壊され、高層ビルが建ち、隠されたメモを見ることは不可能に
- 絶望からか、Cは高層ビルから飛び降りる
・後半
- 高層ビルから飛び降りたはずのCは、なぜか平地にいる
- その土地にはある一家が暮らしていて、娘の1人はMと同じように何かを書いたメモを隠す
- 家族は不幸に遭い命を落とすが、時を経てその土地には家が建つ
- やがてCとMが住み始め、Cは命を落とし、Mはメモを隠し去っていく
- メモをついに読むことができたゴーストは消えてしまう
ってな感じ。
作品を鑑賞済の人は分かると思うのですが、本作は考察必須の「いったいどういうことだってばよ」作品のため、どうしてこういう風になったのか個人的な解釈を書かせていただきます。
■『ア・ゴースト・ストーリー』の考察
・なぜ家が建つ前の時代に戻ったのか
なぜCは高層ビルから飛び降りても消滅することなく、2人が住むことになる家が建つ前の同じ土地に戻ったのか。
これに関してはデヴィッド・ロウリー監督がインタビューで答えてくれているので、引用させていただきます。
「時間は空間を超越できると考えている。特にこの映画で描いたゴーストは、本来の時間の外側に存在している。だから、空間を超越しているのだと思う。私は時間というものについて、時系列に線のようにずっと伸びているものではなく、湖に石を投げたときにできる波紋のようなものではないかと感じている。」
by デヴィッド・ロウリー
この映画を視聴時にはここ当たりで
え、ループ系の話なのコレ?
と、若干困惑し始めてました。
・1週目と2週目のゴーストの行動の違いについて
- 1週目(旧ゴースト):本作の主人公であるC
- 2週目(新ゴースト):旧ゴーストが遡った世界線に本来存在しているC
ですが、Mが出ていった後の家に2人のゴーストが取り残されるラストシーンでは、旧ゴーストはすぐに柱に隠されたメモを探し、新ゴーストはドアを開けてMに付いていきます。
最初は旧ゴーストはずっとメモに固執していて、新ゴーストはMに付いていくという2人は別の決断をしたのかと思っていたのですが、作中で描かれていないだけで恐らく旧ゴーストも最初はMに付いて行っているんですよねコレ。
Cはエゴが強い男性として描かれているから、付いて行った先で新たな人生を歩み始めたMを見て絶望したのかもしれないし、Mの死を見届けたのかもしれないですが、いずれにせよ1回Mに付いて行った後、この世への未練がMからMが残したメモに変わり、また家に戻ってきているのだと思います。
新ゴーストはいざ家に戻ってきていくら柱をひっかいて探しても、旧ゴーストがメモを取り出した後のため、当然いつまで経っても見つけることはできない。
そして、住人の隙を見てはメモを探し続けるもののやがて家が取り壊され、高層ビルが建ち、過去に戻るというループに入るというわけ。
こう考えると、Cがいくら一生懸命柱をひっかいても1週目ではメモが見つからなかったこととも辻褄が合う。
1週目の描写ではMが家を去った後にすぐメモを見ようと柱をひっかいているように見えるんですけど、直後に新たな家族が内見しに来ていることから、カメラが切り替わった段階で相当な時間が経過していることが予想されます。
この視聴者と作中のゴーストが感じているだろう時間の流れのギャップを利用した表現も、本作の特徴の1つ。
・ニーチェの『永劫回帰』の思想に近いのかも
Cは時を越えてタイムトラベル的行動をしているものの、結局CとMの運命やゴーストになってからの行動を変えることもできていなく、2週目も3週目のゴーストも永久に同じ運命を繰り返すことが予想されます。
ただCDをリピート再生しているように、人生は仮に生まれ変わったとしても”その年その時その瞬間まで、まったく同じで再び繰り返す”というニーチェの『永劫回帰』の思想に近いのかもと思いました。
・女のゴーストの謎
隣の家には同じようにシーツを被った女のゴーストが「ずっとある人を待っている」「誰を待っているのかさえ忘れてしまった」と住み着いてます。
しかし、家が取り壊されたときに「もう来ないみたい」と昇天。
結局このゴーストの正体は謎のままなんですが、過去に遡ったときに出会った少女なのかなって思ってます。
その少女が石の下に何かを書いたメモを隠すシーンがあり、もしかしたら「そのメモを家族に見てもらいたい」という思いで現世に留まっていたのかもしれませんが、家が取り壊されてメモが掘り起こされてしまい、目的を失ったことにより成仏(というか消滅?)したのかも。
『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』考察まとめ
作品全編に渡って昔のブラウン管のテレビのような画角だったり、Cが死んだときのMの悲しみの描写など、各方面に渡って拘りが感じられる作品でした。
- 物静かな映画が好き
- 哀愁漂う映画が好き
- 考察が捗る難解な映画が好き
って人はぜひお試しあれ。
かゆい
うま
■VOD/動画配信サービス
『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』が配信中のサービスはこちら(2021年1月現在)
※配信有無の詳細は各サービスをご確認ください。