Netflix産映画「ROMA/ローマ」が見事アカデミー賞3部門を受賞しました。
コレにはロムルスも大喜び。
僕もシレっと視聴済でしたので、今回はこの「ROMA/ローマ」の考察記事という形で書いていこうかと思います。
まず始めに言っておきますと、この記事は
「ROMA/ローマ」が好きだ!最高だった!
ではなく、
ぶっちゃけあまり好きじゃなかった。何がいいのかよくわからなかった
という人向けです。
実を言うと、本作に対しては僕も『大傑作!!!』とまではいかなく、『映像作品としては傑作、映画作品としては良作』くらいに感じてまして。
なので、『ちょっといまいちだったな…』という人に向けて、そこまで遠くないテンションというか目線で、この映画の何がそんなにすごいと言われているのかという点について、考察していこうかと。
もちろん、あくまで僕が感じた数か所のみについて、という形です。
本作やこういったジャンルの作品が得意な人からしたら、この記事を読むまでもなく、僕なんかよりも「ROMA/ローマ」の良さを理解できていると思いますしね。
ROMA/ローマ
映画ランク:A
予告編はこちら
原題:"Roma" 監督:アルフォンソ・キュアロン 脚本:アルフォンソ・キュアロン 出演:ヤリャッツァ・アパリシオ マリーナ・デ・タビラ
作品のジャンルはだいたいこんな感じ。
アクション ☆☆☆☆☆ ドラマチック ★★★★★ コメディ ☆☆☆☆☆ ホラー ☆☆☆☆☆ グロテスク ☆☆☆☆☆ ミステリー ☆☆☆☆☆
■あらすじ
舞台は1970年代のメキシコ。
まぁまぁ裕福そうな家庭と、そこで働く2人の家政婦。
主人公家政婦(クレオ)は雇い主に酷くいびられることもなく、休日にはちゃっかりデートも楽しめている。
穏やかに流れる日々の中、発覚する雇い主家族のパパの浮気と、クレオの妊娠。
そして瞳を閉じれば瞼の裏にはフルチン。
■解説/ウラ話
・ストーリーについて
この作品、実は9割方キュアロン監督の幼少期の記憶に基づいたストーリーとのこと。
だから特に盛り上がらなかったり、『別にいらなくね?』的シーンも複数存在。
恐らくキュアロン監督はあの家庭にいるわんぱく坊主のうちの誰か1人であって、クレオのみのシーンは実際の家政婦本人から聞いた話とかだったりするのでしょう。
幼少期の記憶であるからこそ、もちろん記憶はあやふや。
だからこそそれを表すためとか、余計な彩はいらないとか、そういった理由から全編モノクロなのかな?と、個人的には解釈してます。
・配役について
アカデミー主演女優賞に堂々とノミネートされた主人公クレオ役の彼女ですが、実は演技は本作が初めてとのこと。
それぞれのシーンに出てくる人々も実際にその職についている人を起用(全員かは知らん)。
キュアロン監督も台本をキャスト陣に渡すことなく、口頭でその都度台詞の伝達や演技指導をしていたとのことです。
だからこそ雑味のないリアルなやり取りを映像に収められたのか!みたいな。
すげーやキュアロン。
※ここからネタバレを含む箇所があります
■「ROMA/ローマ」のすごいところ
・カメラワーク
まず
『これいる?なんかのフラグになってる?』
って思うであろう冒頭のシーン。
清掃をしている際の排水溝に水が流れ込む映像が延々と映し出されるんですが、このしつこさにはもちろん意味があります(たぶん)。
その水の流れ、ず~っと縦の動きなんですね。この縦移動ってのが重要。
長尺で縦移動の映像を脳裏に焼き付けてきた冒頭とはウラハラに、いざ本編が始まると、非常に横移動が多い。
ゆっくりとぐいーんぐいーんと横に動く。
散々横移動を見せつけた後に、もう一度変化が訪れるのはラストシーン。
クレオと雇い主ファミリーの絆を温かく表現する台詞を挟みつつ、またここから何気ない日常が続いていくことを仄めかす綺麗な描写で締めくくられるのですが、ここまで我慢してきた分を一気に解放するかのように、これでもかっていうほど印象的な縦移動が用いられています。
さながらハンバーガーのように、縦移動で横移動を挟み込むような構成―。
この対比は、映像作品として説得力を増している要因の1つであることは間違いないでしょう。
もう1つすごく特徴的なのが、ちょっと遠くから映した長回しが非常に多いこと。
一瞬『アレ?主人公どこ?』ってなるくらい情報量が多いシーンもあります。
コレもまた、「クレオたちに今起きていることは大事件だけど、この世界からしたら1つの小さな歯車でしかない。しかし、その小さな1つ1つが噛み合わさっているからこそ、この世界がある」と言わんばかりの手法ですね。
上記のような「縦横の対比移動」+「引き気味のカメラワーク」から、「あくまで視聴者はただそこにある日常や、起きたことをありのまま観測する。」といった感覚を、観測者に歩調を合わせ置いてけぼりにすることなく、生み出すことに成功しています。
・テーマの1つは死
ある意味のほほんと日常系を貫いてる本作の割に、頻繁に「死」の描写が紛れ込んでいるんですよね。
- ①子どもが『返事がない。ただの屍のようだ。』的なことを言うシーン
- ②病院での新生児を見ている際に大地震が起きるシーン
- ③デモで多数の死者が出るシーン
- ④クレオの死産
- ⑤海岸のシーン
特に④⇒⑤の1つの命を失い、2つの命を救った後に吐露した「産みたくなかった」というセリフ。
「不安」「悲哀」「安堵」「罪悪感」などの様々な感情が入り乱れつつ、誰にも言えなった1言。
もう1つの「死」を感じつつ「生」に触れたことによる、クレオの「魂の再生」を表現するかのような絶妙なシーンですよね。
「ゼロ・グラビティ」でも見せた多数の「死」を乗り越えた先の「生」⇒「日常への帰還」というドラマチックな描写を静かに描くのがキュアロンは本当に上手いです。
・タイトルに隠されたメッセージ
僕は前情報ゼロで映画を観ることが多いので、タイトルを見たときは
こんなのを想像していたんですよね。
観始めて数分後、
全然ローマじゃねーじゃん!
って思ったのは僕だけではないでしょう。
しかし、ちょっと冷静になって”ROMA“の綴りを逆にしてみると、”AMOR“(スペイン語で「愛」)になるんですよね。
恐らくコレが本作タイトルの真意でしょう。
インタビューとか読んでないから知らないけど、 なぜ逆にしたかについては 「記憶を遡ったから」とか「別視点からの愛」とか「いろいろな愛の形」とか、なんかそんなんじゃないっすかね(適当)。
『ローマ/ROMA』の評価まとめ
だらだらと羅列してきましたが、恐らくキュアロンが仕込んだ技術や意図はきっともっといっぱいあることでしょう。
アカデミー賞の監督&撮影賞受賞っていうのも納得の力作といった感じ。
Netflix映画って、1人だけ有名なキャストを使った比較的低予算&そこそこ面白いってイメージだったんですが、普通にアカデミー賞やゴールデングローブ賞の複数部門を受賞するほどまでに急成長してて、「映画好きはNetflix入会がマスト」みたいになるのは時間の問題かもしれませんね。
ネトフリ入会済で未鑑賞の人は、ぜひ「ROMA/ローマ」をチェックしてみてください。
ストーリー以外にも監督の手腕に注目してみると、より楽しめると思います。
かゆい
うま